不具合報告書・なぜなぜ分析をAIで作る方法|そのまま使えるひな形と指示文を製造業目線で解説

「不具合が出たので、取引先に報告書を出してほしいと言われた」「なぜなぜ分析をやったが、結局『注意不足』で終わってしまう」——製造業の現場で、報告書づくりは手間がかかるうえに、書き方で悩みやすい業務です。

この記事では、不具合報告書となぜなぜ分析の下書きにAIを使う方法を、そのまま写して使えるひな形と指示文の例、うまくいかないときの切り分け表、提出前のチェックリストつきで整理します。

先に結論:AIは「原因を決める」のではなく「整理と問いかけ」に使う

AIは現場を見ていないため、不具合の本当の原因を言い当てることはできません。AIに任せるのは、現場で集めた事実を報告書の形に整えることと、「なぜ」を掘り下げるための問いを出すことです。原因の確定と対策の決定は、必ず人が現場で確かめて行います。

STEP 01事実を集める現物・記録・聞き取り
STEP 02AIが下書き報告書の形に整理・問いを出す
STEP 03人が確かめて決める現場で検証し対策を決定
図1 AIを使った不具合報告書づくりの流れ

AIに任せること・人が担うこと

AIに任せる
メモを報告書の形に整える項目ごとに振り分ける
「なぜ」の問いを出す見落としの候補を挙げる
抜け・矛盾の指摘
人が担う
事実の確認現物・記録で裏を取る
原因の確定再現・検証で確かめる
対策の決定と提出
図2 不具合報告書づくりでのAIと人の分担

特に注意したいのは、AIがもっともらしい原因を「事実のように」書いてしまうことです。下書きに出てきた原因は、あくまで調べるべき候補として扱ってください。

そのまま使える不具合報告書のひな形

次の表をWordやExcelに写して使います。取引先から指定の書式がある場合はそちらを優先し、このひな形は社内の下書き用として使ってください。

項目 書く内容 書き方のポイント
発生日時・発見場所 いつ、どの工程で見つかったか 「発生」と「発見」が違う場合は両方書く
対象品・数量 品名、ロット、不具合の数と総数 数は確認できた分だけ書く
現象 何が、どうなっていたか 「不良」ではなく寸法・外観など具体的に
応急処置 流出を止めるために何をしたか 選別・隔離・出荷停止など
発生原因 なぜ不具合が作られたか なぜなぜ分析の結果を書く
流出原因 なぜ検査で見つけられなかったか 発生原因とは分けて書く
再発防止策 発生・流出それぞれの対策 誰が・いつまでに・何を、まで書く
効果の確認 対策が効いたかの確かめ方と時期 確認する日付を決めておく

「発生原因」と「流出原因」を分けて書くのがポイントです。この2つが混ざると、対策が「検査を強化する」だけで終わりやすくなります。

指示文の例①:現場メモから報告書の下書きを作る

現場で書いた走り書きや聞き取りのメモを、ひな形の項目に振り分けてもらいます。顧客名・品番などは伏せ字にしてから貼り付けます。

あなたは製造業の品質管理担当者です。次のメモをもとに、不具合報告書の下書きを作ってください。
項目は「発生日時・発見場所/対象品・数量/現象/応急処置/発生原因/流出原因/再発防止策/効果の確認」の順にしてください。
メモに書かれていないことは推測で埋めず、「【要確認】」と書いてください。
原因については断定せず、「候補」として書いてください。
――メモ――
(ここに現場のメモを貼り付ける)

「書かれていないことは【要確認】と書く」という一文が大切です。これを入れないと、AIが空欄をそれらしい文章で埋めてしまうことがあります。

指示文の例②:なぜなぜ分析の「問い」を出してもらう

なぜなぜ分析を一人で進めると、思い込みで掘る方向が決まってしまいがちです。AIには答えではなく、次に確かめるべき問いを出してもらいます。

次の不具合について、なぜなぜ分析を進めています。現時点でわかっている事実と、ここまでの「なぜ」を示します。
次に確かめるべき問いを、「人・機械・材料・方法」の観点ごとに3つずつ挙げてください。
それぞれの問いについて、現場で何を見れば確かめられるか(記録・現物・聞き取りなど)も書いてください。
「注意不足」「確認不足」のように人の意識で終わる答えは避けてください。
――事実――
(現象・発生状況を貼り付ける)
――ここまでのなぜ――
(なぜ1、なぜ2…を貼り付ける)

出てきた問いの中から、現場で実際に確かめられたものだけを「なぜ」として採用します。

指示文の例③:提出前に抜けと矛盾を指摘してもらう

書き上げた報告書を、提出前に読み手の目線で点検してもらいます。

次の不具合報告書を、取引先の品質担当者の立場で読んでください。
「事実と推測が混ざっている箇所」「発生原因と対策がつながっていない箇所」「数量や日付の食い違い」を、該当する文を引用して指摘してください。
文章の書き直しはせず、指摘だけを箇条書きで出してください。
――報告書――
(ここに報告書を貼り付ける)

「書き直しはせず、指摘だけ」と頼むと、自分の文章のどこを直すべきかが分かりやすくなります。

なぜなぜ分析がうまくいかないときの切り分け表

症状 考えられる原因 試すこと
最後が「注意不足」で終わる 人の意識で止めている 「なぜ注意しなくても起きない仕組みがなかったか」と問い直す
「なぜ」が途中で枝分かれして収拾がつかない 1つの「なぜ」に複数の答えを入れている 枝ごとに分けて、それぞれ最後まで掘る
対策が「教育する」「周知する」だけ 仕組みの対策まで掘れていない 治具・手順・表示・設備側でできることを挙げる
AIの下書きどおりの原因になっている 現場での確認を飛ばしている 原因の候補ごとに、確かめた記録があるかを見る
発生原因の対策しかない 流出原因を分析していない 「なぜ検査で止められなかったか」を別に掘る

AIに入力する前に確認したいこと

不具合やクレームの情報は、取引先との関係にかかわる社外秘の情報です。AIに貼り付ける前に、次の点を確認してください。

  • 顧客名・品番・図面番号は、「A社」「品番X」のように伏せ字にする
  • 社内で使ってよいと決めたAIツールだけを使う
  • 写真や図面をそのまま読み込ませない(必要なら社内ルールを確認する)

入力してよい情報の線引きを社内で決めていない場合は、生成AIの社内ルールの作り方も参考にしてください。

提出前のチェックリスト

  • 【要確認】の箇所がすべて埋まっているか
  • 発生日時・数量・ロットが、記録と一致しているか
  • 事実(確認したこと)と推測(候補)が書き分けられているか
  • 発生原因と流出原因が分けて書かれているか
  • なぜなぜ分析が「注意不足」「確認不足」で終わっていないか
  • 再発防止策に「誰が・いつまでに・何を」が入っているか
  • 効果を確認する日付が決まっているか
  • 顧客名などの伏せ字を、提出用では正しい名前に戻したか

再発防止策で作業手順が変わった場合は、手順書の更新まで終えて完了です。手順書の直し方は作業マニュアル・手順書をAIで作る方法で整理しています。

まとめ:AIは「整理役」と「問いかけ役」として使う

不具合報告書となぜなぜ分析でAIが役立つのは、メモを形に整える作業と、見落としに気づくための問いを出す作業です。原因の確定と対策は、現場で確かめた事実をもとに人が決めます。まずはひな形を写し、次に不具合が出たときに指示文の例①から試してみてください。

NKクリプトンのAI導入支援では、報告書や日報など現場の書類業務のどこにAIを使うかを一緒に整理し、自社の書式に合わせた指示文づくりまで伴走します。「うちの報告書の書式で使えるか」といったご相談は、お問い合わせからお気軽にどうぞ(初回相談無料)。

← コラム一覧へ戻る